【16】退院後1ヶ月間、実家で療養する

これは、脳のがんとも言われる脳腫瘍(G2、乏突起膠腫)を患ったときの体験記です。2015年7月、東京女子医大で脳腫瘍の覚醒下手術をしました。約1ヶ月の入院生活の後、仕事復帰までさらに1ヶ月、実家での療養生活を行いました。ここでは、実家でのリハビリの様子について書きたいと思います。
(※覚醒下手術とは意識がある状態で腫瘍の摘出を行う手術のことです。参考までに、こちらの記事もどうぞ)

初めてのウォーキングで、開始して5分で家に戻る

実家での療養中、時間を見つけては家の周りをウォーキングしていました。入院中もできるだけ歩くようにしていたので外を歩くのも問題ないだろうと思っていました。

ですが、初めてウォーキングした時は5分くらいで家に戻ってきてしまいました。外を一人で歩くことに対して、急に怖さを覚えてしまったためです。病院内にいたときの安心感がなくなる影響は結構あるのだなと感じました。

結局、不安がなくなるまでに数日かかってしまいました。そこからは少しずつ歩ける距離も伸びていき、1ヶ月後には1時間くらいなら普通に歩けるようになりました。

ちなみに一度だけ、走ってみたらどうなるのだろうと思い凄くゆっくりとですが走ってみたら、フラフラして転んでしまいそうだったので数メートルで断念しました。1ヶ月程度ではまだ走るのは難しいようでした。

本が買えない!

退院してしばらく経っても、目から入ってくる情報を脳がうまく処理しきれていないと感じる時がありました。音がうるさくて耳を塞ぎたくなるように、視覚情報がうるさいというか、目から入ってくる情報量が多く脳が疲れてしう感じです。

視覚情報がうるさいというのは、例えば、渋谷のスクランブル交差点のような場所にいることをイメージしてもらうと何となく伝わるでしょうか。人、車、建物、色や文字など目に入ってくる情報が多いと感じるような状況です。ただ実際は、渋谷どころか地元の繁華街ですらうるさいと感じるような状態でした。

ある日、リハビリがてら地元にあるショッピングセンターのようなところに買い物に出かけた時のことです。本屋があったので暇つぶし用に本を買おうとしました。

しかし、本棚を眺め始めてすぐ買うのを諦めました。本棚には色とりどりの本が並べられていて、さらには表紙に様々な書体で文字が書かれていて、目に入ってくる情報の多さが嫌になってしまって本を選べなかったからです。

一瞬、目をつぶって適当に選んだ本を買っていこうかとも思いましたが、そんなことをしてもあまり意味がないと思い直し、買うのをやめました。

後日、再び本屋に行ってみましたが、その時も買えず、結局、3回目に本屋に行った時にやっと買えました。退院して3週間くらいたったころだったと思います。

まさか、本を買うといったようなことで苦戦するとは思いませんでしたが、リハビリをしていく過程では予想外の出来事も起こりうるということなのだなと思いました。

いちいちの出来事に一喜一憂するのも疲れてしまうので、できるだけ気持ちをニュートラルな状態に保ち、そういうこともあると受け入れようと思いました。

その後も、しばらくの間(1年くらい)は、目を閉じたくなることが時々ありました。特に東京駅のような利用者数の多い駅で、大勢の人の間を縫って歩かないといけないような状況の時に感じました。目から入ってくる情報に加えて人とぶつからないように歩くにはどうしたらいいかとか、色々と考えることが多いからではないかと思います。

今ではこういったことで困ることはなくなりつつあります。脳内で何がどうなって回復できたのかはわかりませんが、普段の生活をしていくうちにだんだんと戻ってきた感じです。

脳を摘出して一時的にできなくなったことが少しずつ元通りにできるようになってきたということは、摘出した部分がやっていた仕事を他でカバーするようになったということなのかなと思います。よくはわかりませんが、脳って不思議だなと思いました。

リハビリが患者任せになっていることには疑問

退院してからも、診察とは別に外来でのリハビリがあったりリハビリ状況の経過観察のようなものがあるのかと思っていたのですが、そういったものは無いようでした。

先生からも、出来るだけ左手を使うようにとか簡単なアドバイスはあったのですが、それ以上のことはあまりなく、普段の生活をすれば自然と回復してくるといった感じでした。自分としては回復具合を定量的に判断できる手段が欲しいと思ったのですが、無いと言われては仕方がないので自分で考えて行うことにしました。

例えば、手のリハビリに関しては、パソコンのタイピング練習ソフトを利用しました。正確さやスピードで点数を出してくれるので回復具合が測定できそうだと思ったからです。

僕はソフトウェアエンジニアなのでタイピングは速い方だと思うのですが、最初に測定したらものすごく点数が低くて初心者レベルという評価でした。これには結構ショックを受けました。

悔しさもあって1年ぐらい毎日続けました。おかげで最終的には術前と同じくらいのスピードでタイピングできるまでになりました。

ちなみに、リハビリで利用したのはe-typing(https://www.e-typing.ne.jp/)というweb上でタイピング練習できるページで、最初はD判定だったのがNinja判定(Aの上がSで、それを超えるとGood、Fast、Thunderとか変わったネーミングになる。NinjaはThunderの1つ上のランク)までになりました。

あとは、滑舌の練習で早口言葉を言ったりしていました。言える言えないがはっきりとわかって回復具合が判断しやすいと思ったためです。これもだいたい1年くらい続けていたと思います。

他にも、気になる機能について自分で考えてリハビリするといった感じで、いくつかやっていました。ただ、結果的には特に問題があったわけではないですが、リハビリに関して専門的な観点から機能の回復具合を診たり、アドバイスをもらったりする機会があってもよさそうなのになと、ちょっと疑問に思いました。

退院後1ヶ月(術後2ヶ月)でのリハビリ回復具合

  • 歩く:1時間程度のウォーキングができる
  • 左手を動かす:退院時50%→1ヶ月後70%
  • 顔の左側を動かす:ほとんど動かないまま
  • 滑舌:舌が動かしにくいので、話しづらい感じが残る

この記事は個人の体験に基づいて書いたものです。病状などは人それぞれ異なるものなので、気になることがあったら必ず、主治医に確認してください。本ページについてご質問等ありましたらお問い合わせページからお願いします。

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