脳に楽しいと認識させるためには、笑顔になることが必要?

2015年7月、東京女子医大で脳腫瘍の手術をしました。術後、左半身に麻痺が出ました。特に顔に強く出て、しばらくの間、顔の左側の表情筋は動かせないような状態でした。ですが、そうなったからこそ知れた不思議な感覚もありました。ここでは麻痺になってみて体験した不思議な感覚について書いてみたいと思います。

作り笑顔と心から面白いと思った時の笑顔の違い

手術から2ヶ月くらい経ってもまだ、顔の左側の表情筋はピクリとも動きませんでした。何をどうすれば動くようになるのかわからなかったので、本当に動くようになるのだろうかと考えると、とても不安でした。

そんなある時、テレビのバラエティ番組を見ていたら、面白くて声に出してしまうくらい笑ったことがありました。表情筋の感覚がいつもと違うように感じたので鏡を見てみると、左側の口角が右と同じように上がっていました。今まで全く動かなかったので、とてもビックリしました。おぉ、上がるじゃんと思って凄く嬉しくなりました。

ですが、数分経つと、またすぐに戻ってしまいました。再度笑顔を作ろうとしても元通りピクリともしません。心から笑うと笑顔になるのですが、意図的に笑顔を作ろうとしても口角は上がらないようでした。心から笑った時の笑顔と作った笑顔では、脳から表情筋に対する命令経路が違うのだと知り驚きました。

ただ、意図するしないはともかく、笑顔になれたということは、表情筋が全く動かせないわけではないと知れたので嬉しかったです。

そこで、表情筋を動かすためのリハビリとして、心から笑える状況を作ることから始めることにしました。そうやって笑顔になる機会を増やしていくうちに、表情筋を意図的に動かす感覚も徐々に取り戻せるのではないかと考えたからです。

このやり方が効果的だったかどうかはわかりませんが、少しずつ表情筋を動かせるようになってきました。今はまだ、左右同じように動かせられるとは言えませんが、最初の頃と比べるとだいぶ動くようになったと思います。

それにしても、表情筋を意識して動かすパターンと、無意識に動いてしまうパターンがあることには、ちょっと興味深く感じました。

自分の表情がどのように伝わっているのかがわからない不安

手術から3年経った今でもまだ、表情筋に少し麻痺があって笑顔がうまく作れません。

左側の口角は右と同じようには上がらないので、ちょっと引きつったような笑顔になってしまいます。鏡などで確認すると見た目でもわかりますし、筋肉が動く感覚からも顔の左側に違和感があります。

でも、まわりの人が言うには、それほど気にならないか、全然気づかないそうです。ただ、自分には違和感があるので、気づかないふりをすることもできません。そのため、他の人は気づいていないだろう、もしくは、気づいていたとしても気にしていないだろうと思い込みながらコミュニケーションをとっています。

ですが、自分自身の感覚に反して気にしていないだろうと思い込むのは不自然なことです。自分の表情が相手にどのように伝わっているのかがわからないという不安が、どうしてもつきまといます。

特に自分の場合、話すことが得意ではないので、友人と集まっても、ニコニコしながらみんなが話しているのを聞いている事が多いです。言葉によるコミュニケーションを得意としないので、なおさら表情が相手にどう伝わっているのかが気になります。

楽しんでいても、それが伝わっていないのではないかとか、逆に、苦笑していると捉えられて、つまらなそうな顔に見えているのではないか、などです。さらには、友人ならまだいいのですが、初対面の人とかの場合は、さらに気になります。

もう3年も経過したので、最近では、少しずつ気にしないことに慣れつつありますが、ふとしたタイミングで気になったりすることが、まだあります。40年も口数が少ないままできたので、急に方向転換するのも難しいですけど、こうなってみて感情を言葉で伝えることをもっとしていかないといけないなと思いました。

笑ってはいけないのに笑顔になってしまう

表情筋を動かせないことで、別の困ったこともありました。

ある時、笑ってはいけない状況で、理由は忘れてしまいましたが、なぜだか急に面白くなってしまったことがありました。すると、意図していないのに勝手に笑顔になってしまいました。

笑ってはいけない状況だったのですが、表情筋を動かせないので逆に澄ました顔ができません。たまたまマスクをしていたのでなんとかごまかせたのですが、こういったパターンもあるのかと、新しい発見をした感じがしました。

感情がそのまま表情に出るのは困るので、感情とは別に表情を作ることができるようになっているのかな、などと思った出来事でした。

脳に楽しいと認識させるためには、笑顔になることが必要?

意図的に笑顔を作ることができないと、必然的に笑顔でいる時間も減ることになります。そういった状態が続いていたからか、どうも気分が低調なままで上向いてきませんでした。笑顔になれないと、こんなにも気持ちが晴れないものかと思いました。

また、別の記事(覚醒下手術を受ける際、不安な気持ちに負けないために行ったこと)で、精神論的なアプローチでは精神状態をコントロールできないから、身体的な行動から精神に働きかけて精神状態をコントロールする、といったことを書きました。

例えば、不安でドキドキしている時(精神状態)、大丈夫だと自分に言い聞かせる(精神論的なアプローチ)よりかは、深呼吸(身体的な行動)をした方が不安が鎮まる(精神状態をコントロールできる)といった話です。

これらを合わせて考えると、気持ちを上向かせるためには楽しいと思う気持ちだけではダメで、笑顔を作るという行為が必要なのかもしれないと思いました。心から楽しいと思えると意図しなくても勝手に笑顔になったのは、脳の仕組みがそうさせているからなのかなと思ったりもしました。

この記事は個人の体験に基づいて書いたものです。病状などは人それぞれ異なるものなので、気になることがあったら必ず、主治医に確認してください。本ページについてご質問等ありましたらお問い合わせページからお願いします。

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