2008年に僕は脳腫瘍の告知を受けました。以来、苦しい時期もありましたが、さまざまな場面で僕を助けてくれたのが音楽でした。その中でも、ここでは「赤い靴」というアーティストに関するエピソードを書きたいと思います。
赤い靴との出会い
2012年に僕が行った初めての大橋トリオライブで、ドラムを叩いていたのが「赤い靴」の神谷さんでした。そこで、大橋トリオの歌声に魅了されると同時に、神谷さんのドラムにも魅了されました。
音楽に詳しい人は、重要なのはリズムだと言ってベースやドラムなどのリズム楽器に注目すると聞きます。でも僕は素人なので、ライブではボーカル以外はほとんど注目したことはありませんでした。
ですが、その時観たライブは今までのライブと違い、ドラムのリズムが気になって仕方がありませんでした。リズムが気持ち良すぎて、無意識にヒザを叩いてリズムをとっていました。こんなことは今までにないことでした。
ライブが終わってすぐ、あのドラムの人は誰だろうかとネットで調べました。そこで神谷さんの名前と、神谷さんが赤い靴というユニットで活動していることを知りました。これは赤い靴のライブにも行ってみないと、と思いました。
実際にライブを観てみたら、空想的な世界観に包まれていて優しい気持ちになるような、とにかく素晴らしくて一発で赤い靴のファンになりました。以来、都内で行われるライブはほとんど参加しています。それほどハマってしまいました。
※赤い靴ホームページはこちら
赤い靴のCDを手術室に持ち込む
2015年、東京女子医大で僕は脳腫瘍の覚醒下手術をしました。覚醒下手術というのは、意識がある状態で腫瘍を摘出する手術のことです(参考までに、こちらの記事もどうぞ)。
そういった手術だったので、手術中における患者の精神的な負担は結構大きなものとなります。そのため、患者ができるだけリラックスした状態で手術を受けられるようにと、手術室にCDを持ち込んで好きな音楽をかけてもよいということになっていました。
そこで僕が手術室に持ち込むことにしたのが、赤い靴と大橋トリオのCD(大橋トリオのエピソードはこちら)です。僕は命がかかったこの手術に大好きな2組のCDを持っていくことにしました。
手術室で聴いた曲
手術室に入ると、看護師さんに促されて僕は手術台の上で横になりました。足が震えるほどの緊張が襲ってきて…という状態を想像していたのですが、実際は違って意外にも冷静でいられました。
僕の周りでは、スタッフさん5人くらいで手術の準備を行なっていました。機材のセッティングをしたり、麻酔の準備をしたり。点滴の管を僕に刺そうとして失敗したり、なんてことも…。
そうしていると、手術室看護師さんが「持ってきたCDかけましょうか」と言いました。
待っていたら「ヒルニナルレイン」という曲が流れ出しました。さすがに手術室との組み合わせに違和感ありまくりでしたが、逆にそれが面白くなってきて、ちょっとリラックスできたような気がします。
そのあとすぐ、僕は全身麻酔で意識を失いました。ちょっと変わった感じで、赤い靴に応援してもらいながら手術のスタートを切ることができました。
これは手術室に持って行った「イノリーマスの森」というアルバムのダイジェスト動画です。1曲目が「ヒルニナルレイン」です。
僕の気持ちを支えてくれた赤い靴のお二人には感謝の気持ちでいっぱいです。これからもライブを観に行って、幸せな気分に浸りたいと思います。