脳腫瘍の覚醒下手術をしたからか、脳の機能についていろいろと不思議な体験をする機会がありました。
例えば、左半身に麻痺があって運動機能が徐々に回復していく過程を体感したりしました(【19】術後の経過まとめ(できるようになった事、できない事))。脳からの命令が伝わりにくくなって動きづらくなった体が、だんだんと動くようになっていくのはとても不思議な感覚でした。
他にも、笑顔についての体験も不思議で興味深いものでした(笑顔でいると脳が楽しいと勘違いする)。表情筋が全く動かない時期に、心から楽しいと感じた時に、口角が勝手に上がって笑顔になっていたのにも驚きました。
と思っていたところ、よく考えたら脳に興味を持ったのは、これが最初ではないことを思い出しました。
それは大学生の頃の話です。当時の僕は脳の処理経路を意識して作り上げたことがありました(と自分ではそう思っています)。
どういうことか説明します。
僕は大学時代、バスケットボール部に所属していました。チームは、普通の国立大学だったので、選手を集めたりするようなことはなくバスケ好きが集まった部活です。それでも2年生の時には全国大会にも出場したりもしました(僕はベンチ外の応援団でしたが)。
プレーヤーとしての僕はというと、平凡な運動能力、スピードもジャンプ力もない、身長は173cmとバスケをするには低く、選手としても並以下のレベルといった感じでした。
ただ、バスケについて考えることは得意な方だったと思います。そこで、能力の低さをカバーするため、1対1のディフェンスをする時、相手が左右どちらに抜いてくるか読む技術を身につけようとしました。相手の動きが読めれば、スピードの遅さを補えると考えたからです。
どうやって動きを読むのかというと、まずは、相手の体の向きと重心の速度変化を観察します。そして、そこから得られる情報を元に、どちらに抜いてくるかを予測します。例えば、おなかは必ず進行方向を向くとか、右にフェイントして左に進む場合は右足が地面につく瞬間にスピードがグッと落ちる(逆方向に切り返すため)とか、論理立てて予測します。
このようにして考えたことをもとに相手を観察すると、だんだんと相手の動きが予測できるようになりました。高確率で予測できるようになるまでには、だいたい3ヶ月くらいかかったと思います。
ただ、問題はここからでした。ディフェンスをするためには、頭で予測するだけではだめで、その後、適切に自分の体を動かす必要があります。ですが、頭で考えてから体を動かそうとするのでは、反応が遅すぎて全然ディフェンスにならないのです。
最初は①相手を観察して情報をインプット→②相手の動きを予測→③自分の体を動かす、といった感じでした。でも、これでは全然間に合わないので、①→③のような相手の状態を見た瞬間に、無意識に体が動くくらいにならないとダメだと考えました。
そこからは、頭の中で仮想の相手とひたすら1対1を繰り返して、体が素早く反応できるようにイメージトレーニングをしました。そうしていくうちに、だんだんと実践で使えるスピードで反応できるようになっていきました。こうしてやっと相手の動きを予測してディフェンスができるようになりました。これを身につけるのには大体1年くらいかかったと思います。
僕は、直感を鍛えた結果、こういったことができるようになったと思いました。①→②→③を①→③にすることができたという感じです。最初に言った、脳の処理経路を意識して作り上げたとはこういうことです。
ただそれは、自分が勝手に思っていることです。実際は①→②→③が凄く速くなっただけかもしれません。なので、もし脳の研究者とかと知り合ったら、この出来事を話して自分の脳内でどういったことがおこったのかをぜひ聞いてみたいと思っています。もしも脳を研究している方がこの記事を読んだら、ぜひ僕の疑問に回答してもらえると嬉しいです。