これは、脳のがんとも言われる脳腫瘍(G2、乏突起膠腫)を患ったときの体験記です。2015年7月に脳腫瘍の覚醒下手術をするため、東京女子医大に入院しました。ここでは、手術前日までどのように過ごしたかとか、麻酔科医の先生に教わった手術に臨むにあたっての心構えなどについて書きたいと思います。
(※覚醒下手術とは意識がある状態で腫瘍の摘出を行う手術のことです。参考までに、こちらの記事もどうぞ。)
目次
造影剤がおしりから飛び出すんじゃないかと思った話
入院2日目、3日目には検査が予定されていました。入院2日目(検査初日)はCTとレントゲン、入院3日目(検査2日目)はMRIでした。中でも造影剤を使ったCTの検査が予想と違っていたので少し驚きました。
検査前、体が熱く感じるかもしれないといった説明を受けたのですが、MRIでも造影剤を使ったことがあるし、その時も似たようなことを言われたので同じようなものかなと油断していました。MRIの時は右腕に注射をして肩のあたりまで血管の中を何かが通っていくな〜、確かにちょっと熱を感じるかもな〜といった程度でした。
ですが、CTが始まってみるとMRIの時とは全然違って、造影剤が血管を通って、腕、首、頭に流れ、ふたたび首に戻ってきて心臓に向かい、お尻の辺りまで体の中を熱とともに駆け巡りました。最終的には、お尻の穴から造影剤が飛び出すんじゃないかって思ったほどでした。説明の際、絶対に頭を動かさないようにと言われていたのでギリギリ我慢できましたが、危うく動かしてしまいそうになりました。検査自体は数十秒くらいでしたが、終わった後の数分は、造影剤の影響で温泉入った後みたいに体がポカポカしてました。
管を入れっぱなしにすることに驚く
初入院だったのでいちいちのことに驚かされます。入院中、点滴の管などは刺しっぱなしで何日も過ごすということも初めて知りました。検査初日に造影CT検査を行うために少し太めの注射(造影CTの場合は太めになるらしい)で管を入れました。次の日のMRIでも造影剤を使うので、その管は入れっぱなしにしておくということでした。
最初それを聞いた時、管が入っているのが気になって寝られないんじゃないかと心配しました。右腕内側の肘付近に管が刺さっていたので、肘を曲げても大丈夫なのかなとかすごく気になったからです。しばらくの間は腕を伸ばしてできるだけ動かさないようにしていました。ですが、1日中つけていると少しずつ慣れてきて、あまり気にせずに過ごせるようになりました。ただ手術後に自分に繋がっていた管から解放された時、体がだいぶ楽になったように感じたので、慣れたと思っていてもやっぱり負担になっていたのだなと思いました。
手術の主役は自分だという意識を持つこと
病室のベッドで休んでいると、小柄でハキハキした女性が病室に入ってきました。麻酔科医のK先生でした。先生からは麻酔に伴うリスク、手術前の食事制限、あとは全身麻酔にかかっている時と覚醒している時に患者がどういった状態になるのかの説明を受けました。質問があれば何でも聞くようにと言われたので、こちらからも幾つか質問しました。その際のQ&Aをノートにメモしてあったので、参考までに書いておきます。
Q:吐き気などがある場合はどうするのか?
A:早めに言えば薬を投与する。でも最初から少し投与されているので多分大丈夫
Q:体で動かしたりできる部分は?
A:頭以外。腰や足なども動かせる
Q:してはいけないことはあるか?
A:我慢すること
Q:くしゃみとかしたくなった場合は?
A:しても大丈夫。する前に言うこと。
Q:息苦しさはないか?
A:呼吸のサポートがある。会話が聞き取りにくくなるので口にマスクをするのではなく鼻に管を入れる。
他にも手術の主役は自分だという意識を持つことといったアドバイスももらいました。手術中は遠慮しがちな自分を捨てていかないといけないなと思いました。
ちなみに、K先生はとても声が大きいのが特徴的でした。手術で全身麻酔から覚醒状態になる際、K先生の「起きてくださ〜い」という声で目覚めたのですが、その瞬間にまず僕が思ったのは「声でかいなー」でした。全身麻酔から覚醒させるには、このくらいの声の大きさが必要なんだろうなと思ったのを覚えています。
多くのスタッフの方がサポートしてくれていることで安心する
病院のベッドで休んでいると、今度はおっとりした感じの女性が病室に入ってきました。手術室看護師のIさんでした。Iさんは、手術室への移動〜手術終了までの一連の流れをDVD映像を使って説明してくれました。手術準備や覚醒時にどういったことを行うかなども説明してくれたので、わからないことが減って不安も小さくなりました。とてもありがたかったです。
Iさんは、手術中の僕の身の回りの世話もしてくれるということで、何かあったら何でも言って下さいというふうに言ってくれていました。実際、手術中に暑いとか寒いとかを伝えると温度調節をしてくれたり、口が渇いたりしたら水を含ませたガーゼで口周りを拭いて潤してくれたりもしました。前もってコミュニケーションを取っていたおかげもあって、手術中、とても安心感がありました。
手術前に気をつけること
初日に受けた手術の説明の際、先生からは手術前に気をつけることとして2点注意を受けていました。それは、風邪をひかないこと、よく寝ることです。風邪を引いてしまうと手術ができないそうです。なので、手術前はマスクをしたり手をしっかり洗うようにしたりして、いつも以上に体調管理には気をつけていました。また、睡眠が不十分だと覚醒状態が悪くなり手術が上手くいかない要因になるそうです。なので前日は睡眠導入剤が出されていました。そのおかげもあってか手術前日はしっかり眠る事が出来ました。
友達と会ってリラックス
水曜日に入院して翌週月曜日に手術という予定だったので、検査などが行われない土日は比較的ゆっくりと過ごしていました。この間に友達が見舞いに来てくれたりもしました。入院していると、知らず知らずのうちに気を張ってしまいます。友達と話をしたりすると日常に戻ったような感覚になりだいぶリラックスすることができました。