笑顔でいると脳が楽しいと勘違いするという話を耳にすることがあります。もしかしたら、その説についての科学的な根拠はすでにあるかもしれません。ですが、ここでは脳腫瘍の手術の影響で左半身を麻痺した僕の経験をもとに、それってあながち間違いじゃなさそうだなと感じたという話をしたいと思います。
心から楽しいと感じたとき人は「勝手に」笑顔になる
心から楽しいと感じたとき人は「勝手に」笑顔になるんです、と言われても普通はそんなの当たり前だと思いますよね。でも僕はこのことにとても衝撃を受けました。それは、僕の左半身が麻痺していて左側の表情筋が全く動かなかった時期に、それでも「勝手に」左側の口角が上がって笑顔になったからなんです。
それは退院してしばらくたった頃のことでした。テレビを見ていた時、面白すぎて声を出して笑ってしまったことがありました。そこで、あれ?と思いました。顔の左側に違和感があったからです。鏡を見てみると、左側の口角が上がっていて麻痺になる前とほとんど変わらないような笑顔になっていました。ピクリとも動かなかった口角が上がっていたので、とても驚いたのを覚えています。
その時は、これで表情筋の麻痺が改善するかもしれないと思ったのですが、時間が経つとだんだんと口角が下がってきてしまいました。そのあとはまた意識的に口角を上げようとしても、またピクリとも動かない状態に戻ってしまいました。結局、表情筋についてはここから数ヶ月かけて徐々に回復していくこととなりました。
この経験から、意識的に笑顔を作るのと、今回のように勝手に笑顔になるのとでは、脳から筋肉へ信号を送る回路みたいなものが別々に存在するのだと知りました。
そして僕は、人の体にこういった仕組みがあるのには何らかの意味があるんじゃないかと考えるようになりました。そうやって考え始めたものが、最終的に、笑顔でいると脳が楽しいと勘違いするんじゃないかと思い至るまでになります。
脳はアウトプットとインプットを繰り返すことで感情を増幅させる
どのようにして脳が勘違いするかという話をする前に、まず、脳はアウトプットとインプットを繰り返すことで感情を増幅させるんじゃないかという話をしたいと思います。結論に至るために必要なことなので、しばしお付き合いください。
不安になった時などに、身体が強張ったり、ドキドキしたり、呼吸が浅くなったりというような身体反応が出ると思います。で、そういった状態を意識しだしたら、よけいに不安が増したといった経験はありませんか?
これが僕が思う、脳はアウトプットとインプットを繰り返すことで感情を増幅させるということです。不安などの感情が芽生えた時、身体反応を起こすよう脳から身体へ指示が出されるのがアウトプット。それとは逆に、身体反応を脳が認識するのがインプットだと考えてください。これらアウトプットとインプットが繰り返されることで、先ほど言ったように不安が増すといったことが起こると僕は考えます。
これは同様に「楽しい」という感情にも当てはまるんじゃないかと思いました。楽しいという感情が芽生えた時、身体反応として笑顔になることがアウトプットです。それに対してインプットは、笑顔になったという表情筋の動きを認識するといったことになります。
前置きが長くなっていまいましたが、次はこの話をベースに、笑顔でいると脳が楽しいと勘違いすると思った根拠について述べたいと思います。
笑顔でいると脳が楽しいと勘違いする
ここまでの話をまとめると、脳が楽しいと認識するには以下のようなことが起きているのではないかというのが僕の考えです。
- 楽しいという感情が芽生える
- 脳から表情筋へ指令を出して笑顔になる(アウトプット)
- 表情筋の感覚を通じて、笑顔になっていることを脳が認識(インプット)
- 脳が楽しいと認識
- 以降②〜④の繰り返しでより強く感情を認識する(感情の増幅)
この②のところで笑顔になるのは、一番最初に話した「勝手に」笑顔になるという仕組みによるものではないかなと僕は思います。で、時間が経過するにしたがって意識的に笑顔を作って⑤を継続させているのではないかと思います。
もし上のことが成り立つとしたら、②のところで「勝手に」ではなく「意識的に」笑顔を作ったとしても②〜⑤の流れは起きそうな気がします。①がなくて、作り笑顔によって②からスタートしたとしてもやはり脳は楽しいと認識する(勘違いする)んじゃないかと僕は考えました。
以上が、僕が脳腫瘍の手術の影響で左半身を麻痺した経験をもとに、やっぱり「笑顔でいると脳が楽しいと勘違いする」のって間違いではなさそうだと感じたという話です。
なおこの記事に書いたことは、実体験をもとに僕の頭の中で考えたことです。科学的な根拠はありませんので、あしからず。長いことお付き合いいただきありがとうございました。