以前、将棋を観ることに興味を持ったという記事(「聖の青春」を読んで、生き方について考えさせられた)を書いたことがあるが、なんとなくそれが今でも続いている。
僕が将棋を見始めた頃と比べると将棋AIもだいぶ進化していて今では誰もが人間よりもはるかにAIの方が強いと認めるまでになった。
そういったこともあってかほとんどのプロ棋士もAIを活用して将棋の研究をしていると聞く。とある局面でプロですら優劣がはっきりわからない場合でもどちらが優勢かであるとか、次にどういった手を指せば良いかをAIは示してくれるからだ。
ちなみに将棋AIはコンピュータの知識が少しあれば自分のパソコンにインストールして利用することができる(しかも無料で)。アマチュアも含め将棋を指すほとんどの人はパソコンにAIをインストールしているのではないか。
そうなると今の子供たちは将棋を始めた当初からAIの恩恵に預かることができるということになる。だから十数年後には藤井聡太を超える天才棋士が現れるのではないだろうかと考える人も多いだろう。
ただ僕の考えは逆だ。
むしろ将棋AI誕生の影響で藤井聡太を超える天才は現れにくくなったのではないかと思う。
以前読んだ記事に書いてあったが、将棋のプロ棋士とアマチュア棋士の脳の使い方をMRIで調べたら、将棋の盤面を考えるときに使っている脳の場所が違うという結果が出たそうだ(プロ棋士の直観、脳の働き解明)。
このことから言えることは何か?つまりは将棋のプロになるには脳の使い方が変わるくらい将棋のことを考え抜かないといけないということなのだと思う。子供の頃からひたすら将棋の勉強をした結果、脳が進化してプロにまでなれたのだろう。
そう考えると答えを教えてくれる将棋AIはむしろ邪魔な存在なのではないだろうか。
ああでもないこうでもないと悩み考えるのは苦痛を伴うことがある。それを乗り越えてこそ脳は進化するはずだ。そんな時に考えなくても答えを教えてくれるというAIの誘惑を断ち切ることは難しい気がする。
さらには、おそらく将棋AIが示す正解を知っている方がアマチュアの段階では勝ちやすい気もする。となるとなおさら将棋AIと距離を置いて考える力を養うのは難しそうだ。
藤井聡太もプロになる直前になって初めて将棋の勉強に人工知能を活用するようになったらしい。将棋脳の力を最大限高めた上でAIを活用した結果、藤井聡太という歴史に残るような棋士が生まれたのではないか。
そんなことを考えながらふと自分の生活を振り返ってみると、TV、SNS、ゲームや動画、なんとなく過ごすにはもってこいの誘惑が多すぎるなと思う。
将棋のプロになるわけではないにしても、さすがに考えてなさすぎじゃないだろうかと心配になるのは自分だけだろうか。