これは、脳のがんとも言われる脳腫瘍(G2、乏突起膠腫)を患ったときの体験記です。ごくごく初期の段階でみつかった脳腫瘍だったこともあり、手術ではなく経過観察を選択しました。しかし、次第に腫瘍が大きくなってきて、ついに手術をする段階に。ここでは、経過観察からセカンドオピニオンとして東京女子医大に行くまでの経緯を書きたいと思います。
7年の経過観察期間で少しずつ病気であることに慣れていったが・・・
2008年の8月に病気が見つかって最初の1年間くらいは、24時間ずっと頭から病気が離れることはありませんでした。寝ている時にうなされて「わーっ!!」と声をあげながら飛び起きたこともあります。ずっと、どうしようどうしようと病気のことばかり考えていました。
ただ、そんな状況でも以前からよく行っていた知人がやっている音楽のライブを観ている間だけは病気を忘れることができました。
1ヶ月に1回せいぜい1時間程度でしたが、病気を忘れられる時間があるというのが、その時の自分にとってはとてもありがたいことでした。忘れられる時間があるのとないのでは全然違います。こういった時間を少しずつ増やしていくことで、病気の事で頭がいっぱいな状況から自分の時間を取り戻したいと思っていました。
そうして2年、3年と時間が経過するにつれ、少しずつですが病気のことを考える時間は減っていきました。5年くらい経った頃には、あまり病気のことで頭を悩ませる時間も少なくなってきていました。
その一方で、腫瘍の方は少しずつですが大きくなってきていていました。ときどき手術するかどうか聞かれましたが、なかなかやりますとは言うことができませんでした。手術をしたほうがいいのではないかと思いながらもまだ決断できずにいたのです。
セカンドオピニオンで東京女子医大へ
2015年2月頃。見つかった頃は1cm弱程度だった腫瘍も7年で2cm過ぎまで大きくなっていました。医師からも、これ以上大きくなる前に手術をしましょうと勧められました。
ついに来たかという思いと同時に、忘れかけていた恐怖心が復活しました。これにはちょっと戸惑いました。病気のことで悩むことも減り7年という時間をかけて病気を受け入れられるようになったと思っていたからです。どうやらそれは勘違いだったのだと思いました。受け入れたというよりかは目を背けていただけだったのかもしれません。
1ヶ月後、医師から家族への説明をするということで親と共にS大学病院へ行きました。そこでは現在の病状と手術についての説明が行われました。一通りの説明を聞いた後、自分の方からセカンドオピニオンとして東京女子医大に話を聞きに行きたいと申し出ました。
経過観察をしていた7年の間に雑誌やインターネットなどから実績のある病院が他にもないかどうか調べていました。その結果、もし手術をすることになったらセカンドオピニオンとして話を聞いてみたいと思っていたのが東京女子医大でした。
病院を選ぶ一つの基準として手術の実施件数をチェックすると良いと言われます。手術の実施数が多いほど経験があり信頼もできるという理由からです。その点でいうと東京女子医大は他の病院と比べても圧倒的に手術実施件数が多いようでした。
その他にも、東京女子医大のホームページには術後の生存率が平均よりも高いといったデータが示されていたり、術中MRI、覚醒下手術などの手法を取り入れた医療の説明が記載されていて、これらを見て僕は、ここでならより納得のいく治療ができるかもしれない考えました。
S大学病院には7年もお世話になった病院だったので、もちろん他の病院に話を聞きに行くことに若干の心苦しさみたいなものもありました。ただ自分の人生なので、後悔しないためにも話を聞きに行くことにしました。